〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
本間千枝子氏本間千枝子(ほんま ちえこ)氏
エッセイスト。1933年生まれ。NPO「海のくに・日本」副理事長、東京きじ酒の会会長、愛媛県鬼北町「食の大使」など。主書に『父のいる食卓』、『女の酒の物語』、『誇り高き老女たちの食卓』、『セピア色の昭和・記憶の断章』など多数。

酒を通して語る日本人のこころ
 

 酒を含む「日本の食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されたのは最近のことだが、実はお先っ走りの女性グループが「酒を通して語る日本人のこころ」と題名をつけたシンポジウムを、アメリカの三ヶ所フィラデルフィア、ボストン、そしてケンタッキー州のレキシントンで開催して各地で大成功をおさめたのは、十八年前の一九九七年の秋だった。

 その時に講師となって活躍して下さったのは、小泉武夫先生と国際ジャーナリストの下村満子さん、そして通訳をつとめるセーラ・カミングスさんだ。

 主催者の女性たちは、日々の暮らしの中にある日本食を外国の人々に語るとすれば、「酒」がすぐれた文化であり、アメリカの人びとにとっては異文化ながら共に喜びを味わってもらえるだろうと考えたからだった。

 当時、日本酒は世界的な知名度では、ワインやウィスキーに遅れていた。高度な技術で醸し出される米と清冽な水であり、さらに日本人の物事の質を尊ぶ心意気が融合した民族の文化である。

 このシンポジウムは「ザ・ワールド・オブ・サケ」と名付けられ全米日米協会連合の共催を得て、まずフィラデルフィアから始まった。

 すでにアメリカでは各地に日本料理店が営業して居り、講演の後のパーティには、日本酒にふさわしい、しかもおいしい多国籍の肴が賑やかにふるまわれた。

 次の会はケンタッキー州のレキシントンだが、この町は実は競馬で有名であり、何とシンポジウムには、馬の競売以外の目的には他者に解放されたことのない名門会場を提供してくれた。

 さらに主催者グループの私たちが心から感激して成功を喜び合ったのは、ボストンでの最後の講演が終ったパーティ会場で、一人の、作家を名乗る青年が述べてくれた感想だった。

 「酒という日本ではだれにも身近な生活文化を切り口として、日本の社会や日本人の物の考え方を語る試みは、これまでなかったことだが、とても分かりやすく浸透力があった。狭い入口の先に拡散するように見えてくる日本社会が、日本について従来とはまったく別な理解をもたらしてくれました。酒の世界は、本当に奥行きが深いですね!!」

 女性たちは、「今回の試みは完全に理解された」と、全員が胸を熱くした。

 やはり「酒の力」はすばらしい!!

 
 
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