〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
北本勝ひこ氏北本勝ひこ(きたもと かつひこ)氏
1950年、神奈川県生まれ。日本薬科大学特任教授、東京大学名誉教授(農学博士)。日本農芸化学会フェロー、日本醸造学会幹事。専門は、清酒酵母および麹菌の分子細胞生物学。著書に『和食とうま味のミステリー:国産麴菌オリゼがつむぐ千年の物語』 (河出ブックス)、『発酵・醸造食品の最新技術と機能性』(CMC出版)、『分子麹菌学』(醸造協会)、『バイオテクノロジーのための基礎分子生物学』(化学同人)など。

日本の食文化を支えている麹菌
 

 麹菌の研究を始めて四半世紀がたつが、最近、麹菌の人気がひときわ高くなったように感じている。麹が原料となる「甘酒」や「酒粕」が健康面でも注目されているようで、テレビや新聞などでも目にすることが多くなった。麹菌が主役の人気漫画「もやしもん」の影響も大きいようだ。昨年、スコットランドのエジンバラ市で開催された国際菌学会(IMC9)に参加したときに、IMC9を主催したエジンバラ大学のニック・リード教授がわざわざ日本から「もやしもん」を取り寄せたという話を聞いた。

 日本酒はもちろんのこと、味噌、醤油、酢、みりんなど、伝統的な調味料、そして、野菜や魚を発酵させた様々な食品は、日本の食文化の根幹をなすものである。どれも様々な微生物たちの働きによる「発酵」という過程を経たものであるが、その「発酵」に大きく関与しているのが麹菌である。これらのことから、2006年に醸造学会で、麹菌は我が国を代表する微生物である「国菌」と認定された。提唱者の東北大学名誉教授の一島英治博士は「日本からの麹菌の科学技術と文化の発信は、21 世紀の世界に大きなインパクトを 与えるものと期待される。」と述べられている。

 ところで、最近嬉しく思ったことの一つは、「ノーベル化学賞を授賞された鈴木章先生が、授賞決定の記者会見から夜遅く帰宅して、少量の日本酒を飲んで就寝された」という新聞記事を目にしたことである。それは、10年程前のこと、やはりノーベル賞を受賞された先生がワインで乾杯したという話を聞いたとき、残念な気持ちを持ったことを思い出したからである。

 嬉しい出来事があった日には、私は、やはり、日本酒で乾杯をすることに決めている。日本酒で乾杯できる幸せは、日本人だけがもつ贅沢でもあると思う。私自身はノーベル賞をもらう可能性は、残念ながらほとんどないが、教え子がもらう可能性は十分にあると期待している。もし、そのときは、もちろん、日本酒で乾杯をしてもらいたいと思っている。

 
 
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