〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
太田和彦氏太田和彦(おおた かずひこ)氏
1946年生まれ。グラフィックデザイナー/作家 資生堂宣伝部を経てアマゾンデザイン設立。00〜07年・東北芸術工科大学教授。おもな著書『居酒屋百名山』『ひとり旅ひとり酒』『居酒屋おくのほそ道』『愉楽の銀座酒場』『日本のバーをゆく』など。

日本酒の海外紹介について
 

 日本酒好きで居酒屋の本なども書いているが、私の本業はグラフィックデザイン。その立場から。

 政府の肝いりで日本酒を海外に紹介する動きが盛り上がっているのはたいへん結構だ。今の日本酒は史上最高の水準にあり、どこの国のいかなる酒にもひけをとらない。しかし致命的な弱点がある。それはラベルデザインの水準の低さだ。

 パーティーや披露宴などの丸テーブルにシャンパンやワイン、ウイスキー、ビールにまじって日本酒のボトルも置かれるが、その貧相で野蛮なラベルは、フォーマルな会場に浴衣とスリッパで現れて演歌を歌い出したかのようで、たいへんな場違いに見え、とても恥ずかしい。

 戦前のクラシックラベルであればまだしも、最近の日本酒ラベルは下手な筆字のなぐり書きばかり。仮にそれが「書芸」であるとしても、その他の表示文字などの処理が全くできていなく、とても人前に出せるものではない。諸外国の人が見て珍奇なだけだろう。もちろん読みもわからないから認知されない。純米酒や吟醸酒の正しい訳語はあるのだろうか。英語やフランス語にしてワインやウイスキーの真似をしろと言っているのではない。ごく希にそうしたのもあるが「ワインに似せている」ようで情けない。

 専門的に見てワイン、ウイスキーのラベルは、しっかりしたタイポグラフィ(文字デザイン)とレイアウト(左右対称など)に支えられ、伝統感のある格を持っている。飲み終えたボトルを捨てるのが惜しいと思った経験をお持ちかと思う。

 西欧の真似ではなく、いたずらに異国趣味のジャパネスクでもなく、またデザイナーの趣味的な遊びでもなく、モダンとクラシックを融合させた酒としてのフォーマルな品格を持ったラベルを望む。いつまでも東洋の珍しい伝統酒ではなく、ワインやウイスキーと同列に置かれるには、普遍的な見え方が必要だ。たとえば元首級の人がそれを手にして違和感なく、しかし日本の国の威厳もあるような。

 おそらく蔵元はそこまで気がまわらないのだろうが、デザインを変えるだけだから、そうお金のかかる話でもない。いかがでしょう。

 
 
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