〜日本文化のルネッサンスをめざす〜日本酒で乾杯推進会議
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100人委員会コラム
高田公理氏髙田 公理(たかだ まさとし)氏
1944年、京都生まれ。武庫川女子大学名誉教授(学術博士)。旅と観光、食文化、酒と嗜好品、眠りなど、人生と生活の楽しみについて考えている。京都大学理学部卒業後、酒場経営、佛教大学教授などを歴任。著書に『酒場の社会学』(PHP文庫)、『自動車と人間の百年史』(新潮社)、『にっぽんの知恵』(講談社現代新書)、『ともいきがたり』(創元社)、編著に『嗜好品文化を学ぶ人のために』(世界思想社)など。

子供たちへの「酒育」を始めよう
 

 2013年、和食がユネスコ世界無形文化遺産に登録されて、広く国内外の注目を集めるようになりました。しかし、現代日本人の日常の食生活は、こうした評価に値するほど豊かなのでしょうか。必ずしもそうではないがゆえに、それ以前から子供たちに食育をほどこす必要性が叫ばれ、さまざまな手立てが試みられてきました。このことは、日本文化と日本人の将来の暮らしにとって非常に大事なことだと思われます。

 ところで今年、2016年には選挙権年齢が18歳に引き下げられて初めての国政選挙が行なわれます。とすると近い将来、成人年齢、ひいては飲酒が許される年齢も18歳に引き下げられるでしょう。ここに大きな問題が発生します。それは、現代日本の若者たちの酒に対する驚くほどの無知に由来する問題です。

 たとえば大学への入学直後、新歓コンパで新入生がイッキ飲みをさせられて急性アルコール中毒になるといった事故は少なくありません。そうかと思うと、やがて三回生になり、ゼミのコンパなどでは酒を飲み始めると、会食の冒頭から甘ったるいカクテルを注文する学生が目立ちます。むろん必ずしも日本酒を飲まねばならないというわけではありません。しかし日本伝来の和食と日本酒の味わいを楽しめる教養を身につけることも、同時に大事なことだと思われるのですが、いかがでしょうか。

 そこで提案したいのは子供たちが18歳になる高校三年生を中心に、きちんとした酒育を施す必要があるのではないかということです。

 酒とは何なのか。世界にはいろんな酒があるが、それらはどのようにして造られるのか。また、それぞれの味や心身に及ぼす影響、料理との親和性、飲酒の作法など、どうすれば楽しく健康的に酒が嗜めるのか――そんなことを内容とする酒育のカリキュラムと面白くて為になる教科書のようなものを作る必要があるように思います。

 2014年にはWHO(世界保健機関)が「有害なアルコール消費の抑制」を提言し、同年6月には日本でも「アルコール健康障害対策基本法」が施行されました。そして2016年の春には、その「推進基本計画」が策定されるようです。そんな年を「酒育元年」と捉えて、新しい試みを始めることが大事だと思います。

 そういえば最近の大学は、学生以外にも受験生、さらには観光客を誘致しようと学内にカフェやレストランを開業するケースが増えています。ならば、さらに思い切って学内にオシャレな居酒屋やバーなどを取り込む――日本の若者たちに対する酒育には、そんな可能性もありそうな気がします。

 
 
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